― 人との関わりが、自分の可能性を教えてくれる

「自分には、これといって得意なことがないんです。」
人と向き合う中で、そんな言葉を耳にすることがあります。
でも、少し話を続けていくと、
「困っている人がいると、つい声をかけてしまいます。」
「なぜか、相談されることが多いんです。」
「人に説明するのは、あまり苦になりません。」
本人にとっては、どれも特別なことではありません。
ずっと自然にやってきたことだからです。
でも、そこに、
その人なりの力が隠れていることがあります。
以前、「自分には、人に話せるような強みはありません。」
と話していた方がいました。
お話を伺っていくと、
職場で新しく入った人が困っていると、
自然に声をかけ、
仕事の流れを説明したり、
分からないことがないか気にかけたりしていることが分かりました。
「どうして、いつもそうしているのですか。」
と伺うと、
少し考えてから、
「自分も最初の頃、分からなくて困ったことがあったからです。」
と話してくださいました。
本人にとっては、
ごく当たり前の行動だったのでしょう。
でも、少し見方を変えてみると、
相手の様子に気づくこと。
自分の経験を相手のために使うこと。
相手に分かるように伝えること。
そこには、いくつもの力があります。
自分では気づいていなくても、
その力によって助けられている人がいるのです。
自分のことは、
分かっているようで、
意外と見えにくいものです。
できなかったことや、
足りないところには目が向いても、
自然にできていることには、
なかなか目が向きません。
だからこそ、
人との関わりが、自分を知るきっかけになることがあります。
「ありがとう。」
「助かりました。」
「あなたに話すと整理できます。」
「この仕事、お願いできますか。」
そんな何気ない言葉の中に、
自分では気づかなかった力が
映し出されていることがあります。
前回のコラムでは、
「できること」より、「活かせること」に目を向ける
ということについて書きました。
資格や知識だけではなく、
人との関わり方や、
仕事の進め方、
困ったときに工夫してきたことも、
これまでの経験の中で培ってきた力なのではないか。
そんなことを考えました。
ただ、その「活かせること」は、
一人で考えているだけでは、
なかなか見つけにくいことがあります。
人と仕事をする。
誰かを支える。
自分も誰かに支えてもらう。
意見を交わす。
何かを一緒につくる。
そんな関わりの中で、
「自分は、こういうときに力を発揮しているんだ。」
と気づくことがあります。
研修の場でも、
似たような場面があります。
一人で考えているときには、
「特に思いつきません。」
と書いていた方が、周囲の人と話し始めると、
「それ、いつもやっていますよね。」
「そういうところ、助かっています。」
と言われる。
すると、
「ああ、これも自分の力なんですね。」
と、少し表情が変わることがあります。
自分の力を見つけるというと、
自分の内側を深く探さなければならないように
思うかもしれません。
でも、ときには、
自分の力は、人との間に表れている。
そんな見方をしてみてもいいのではないでしょうか。
もちろん、
人から言われたことが、
すべて自分というわけではありません。
周囲の評価だけで、
自分を決める必要もありません。
自分では見えていなかったものを知るための、
一つの手がかりにはなります。
誰かに頼られたこと。
感謝されたこと。
任されたこと。
「一緒にいると安心する」と言われたこと。
何度も自然に続けてきたこと。
少し振り返ってみると、
そこに共通するものが
見えてくるかもしれません。
自分の可能性は、
一人で考えているときだけに見つかるものではありません。
誰かと出会い、
関わり、
ときには支え合う。
その中で、
自分では気づかなかった一面を、
誰かが教えてくれることがあります。
自分にとっての「当たり前」が、
誰かにとっての「ありがたい」になっている。
そこに、
これから活かしていける自分の力が、
隠れているのかもしれません。
ときには、「人との関わりの中で、自分は何を渡してきただろう。」
そんなふうに振り返ってみる。
そこから、
まだ自分でも気づいていない可能性が、
少しずつ見えてくるのだと思います。
そして、
自分の力に気づいたその先には、
もう一つ大切なことがあります。
その力を、自分一人の中だけにとどめないこと。
自分の得意なことと、
誰かの得意なこと。
それぞれが持っているものを持ち寄ることで、
一人ではできなかったことが、
できるようになることがあります。
次回は、
「自分の力は、誰かとの間で活きていく」
― 一人で頑張ることから、力を持ち寄ることへ
について、
人と人がそれぞれの力を活かし合うことに目を向けながら、
少し立ち止まって考えてみたいと思います。