― 安心して頼り合える関係を考える

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「ちょっと相談してもいいですか。」
この一言が、なかなか言えないことがあります。
忙しそうだから、声をかけにくい。
こんなことを聞いたら、どう思われるだろう。
自分で考えるべきことかもしれない。
そんな思いから、相談することをためらってしまう。
仕事をしていれば、誰もが一度は経験することではないでしょうか。
けれど、同じように忙しい職場でも、気軽に声をかけ合えるところもあります。
その違いは、どこから生まれるのでしょうか。

なぜ今、心理的安全性が求められるのか

最近、企業研修でも「心理的安全性」という言葉を耳にする機会が増えました。
心理的安全性とは、簡単に言えば、分からないことや困っていること、気づいたことを、安心して伝えられる状態のことです。

では、なぜ今、このような職場が求められているのでしょうか。

働き方や価値観が多様になり、仕事の進め方も複雑になっています。
一人の経験や知識だけでは、対応しきれない場面も増えてきました。
そんな中で、必要なことを相談できず、問題を一人で抱えてしまう。
小さな疑問や気づきが共有されないまま、仕事が進んでしまう。
それが、思わぬ行き違いやミスにつながることもあります。
だからこそ今、一人ひとりが安心して声を上げられる関係が大切にされているのだと思います。

相談できるかどうかは、日頃の関わりから

私自身、管理職として仕事をしていた頃を振り返ると、部下から相談を受けることもあれば、後になって困っていたことを知ることもありました。
こちらは「何でも相談してほしい」と思っていても、相手が同じように感じているとは限りません。
忙しそうな表情をしていなかったか。
話しかけられたとき、手を止めて聴いていただろうか。
相談されたとき、すぐに自分の考えを伝えていなかっただろうか。
今になって、そんなことを思い返すことがあります。
相談しやすい関係は、「いつでも相談してください」という言葉だけでは生まれません。
普段の何気ないやり取りの中で、少しずつ育っていくものなのかもしれません。

「助けて」と言える関係には、受け止める人がいる
「助けて」と言えることは大切です。
でも、それと同じくらい大切なのが、その言葉を受け止める側の関わり方です。
「どうしましたか。」
「話してくれてありがとう。」
「一緒に考えてみましょうか。」
そんな一言があるだけで、相談した人の気持ちは少し軽くなることがあります。

反対に、
「それくらい自分で考えて。」
「前にも説明したでしょう。」
と言われれば、次から声をかけることをためらうかもしれません。

もちろん、仕事には責任があり、自分で考えることも必要です。
心理的安全性とは、何でも許されることでも、意見の違いを避けることでもありません。
必要なことを伝え合い、互いに確かめながら、仕事を進められる関係。
その土台にあるのが、相手を尊重し、まずは話を受け止める姿勢なのではないでしょうか。

安心できる職場は、小さな関わりから

職場の雰囲気を変えようとすると、大きな取り組みが必要に思えるかもしれません。
でも、日々の関わりを少し変えることから始められることもあります。
忙しいときでも、相手の話に耳を傾ける。
分からないことを質問してくれたら、その行動を受け止める。
困っている様子に気づいたら、こちらから声をかける。
そして、自分自身も必要なときには周囲を頼る。
こうした小さな積み重ねが、相談しやすい関係につながっていくのだと思います。

前回のコラムでは、
「頼ることは、弱さではない」
ということについて書きました。
頼ることは、人の力を活かすことにもつながります。
そして、その力を活かすためには、安心して頼れる関係が必要です。
「助けて」と言える人がいて、
「どうしましたか」と受け止める人がいる。
そんな何気ないやり取りの中に、心理的安全性の大切な一面があるように感じています。

皆さんの職場では、困ったときに「ちょっと相談してもいいですか」と声をかけられるでしょうか。
そして、誰かから声をかけられたとき、どのように受け止めているでしょうか。
安心して頼り合える職場は、特別な誰かがつくるものではなく、一人ひとりの日々の関わりから育っていくものなのかもしれません。

次回は、
「話を聴いているつもりが、聴けていないとき」
― 相手が話したくなる関わり方とは
について、日頃のコミュニケーションを振り返りながら、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
次回もお楽しみに。