一人で頑張ることから、力を持ち寄ることへ

「自分でやったほうが早い。」

仕事をしていると、
そんなふうに思うことがあります。

人に頼むより、
自分でやってしまったほうが早い。

迷惑をかけたくない。

任されたことだから、
最後まで自分でやらなければ。

そんな気持ちから、
いつの間にか一人で抱えてしまう。

責任を持って仕事に向き合うことは、
もちろん大切です。

でも、

一人で頑張ることと、
一人で抱えることは、少し違います。

前回のコラムでは、

「自分の力は、一人では見つけにくい」

ということについて書きました。

自分にとっては当たり前にやっていることも、

誰かから、

「助かっています。」

「そういうところ、よく気づきますね。」

と言われることで、

初めて自分の力に気づくことがあります。

では、その力に気づいたら、
次はどうするのか。

私は、

自分の力を、誰かとの間で活かしていくこと

が大切なのではないかと思います。

人には、それぞれ違いがあります。

人の話を丁寧に聴くことが得意な人。

細かな変化によく気づく人。

物事を整理して考えることが得意な人。

周囲に声をかけ、
人と人をつなぐ人。

困ったときに、別の方法を考えられる人。

一人ですべてを持っている必要はありません。

むしろ、

自分にはないものを誰かが持っていて、

自分が持っているものが、
誰かの役に立つ。

そんな関係があることで、

一人ではできなかったことが、
できるようになることがあります。

研修のグループワークでも、
そんな場面を見ることがあります。

なかなか言葉が出てこないときに、
誰かが最初に話してくれる。

その言葉をきっかけに、
別の人が自分の経験を話し始める。

さらに誰かが、

「それって、こういうことかもしれませんね。」

と話をつないでいく。

最初から誰か一人が、
答えを持っていたわけではありません。

それぞれが少しずつ持っているものを出し合うことで、

一人では思いつかなかった考えが生まれていきます。

力を持ち寄るというのは、
こういうことなのかもしれません。

人材育成というと、

「一人ひとりの力を伸ばすこと」

に目が向きがちです。

もちろん、それも大切です。

でも、

一人ひとりが力を持っていても、互いに頼れない。

相談できない。

助けを求められない。

そんな職場では、

せっかくの力が十分に活かされないことがあります。

だからこそ、

「誰が何を得意としているのか。」

「誰に相談すればよいのか。」

「困ったときに、助けてと言えるか。」

そんなことが分かる関係を
つくっておくことも大切です。

人を育てることは、

一人の力を高めることだけではなく、

それぞれの力が、つながる関係を育てること。

そんな見方もできるのではないでしょうか。

武田信玄の言葉として伝えられている、

「人は城、人は石垣、人は堀」

という言葉があります。

以前、このコラムでも触れました。

一つひとつの石は、
形も大きさも違います。

同じ形にそろえる必要はありません。

違うからこそ、

それぞれの持ち味を活かしながら、
支え合うことができます。

人も同じなのかもしれません。

誰かと同じようにできることより、

自分が持っているものを、どこで、誰と活かしていくのか。

そこに目を向けることで、

自分の力の見え方も少し変わってくるように思います。

一人で頑張ることから、

それぞれの力を持ち寄ることへ。

そこから、

人と人との新しい関わり方が
始まっていくのかもしれません。

そして、力を持ち寄るためには、

自分で抱え込まず、誰かを頼ること。

そして、ときには、
誰かに任せることも必要になります。

「頼るのは申し訳ない。」

「自分でやったほうが早い。」

そんな思いから、つい一人で抱えてしまうこともあります。

頼ることや任せることは、
本当に「自分ができない」ということなのでしょうか。

次回は、

「頼ることは、弱さではない」
― 任せることで、人の力が活き始める

について、

少し立ち止まって考えてみたいと思います。

次回もお楽しみに。