自走を止めてしまう関わり方 【シリーズ武田信玄に学ぶ、人と組織の関わり方 立ち返る視点④ 】

研修の場で、
ふとこんな言葉が出てくることがあります。
「最近の若い人は、
自分で考えないんですよ」
「言われたことはやるんです。
でも、それ以上は動かない」
「だから、つい細かく指示してしまうんです」
この言葉を聞くたびに、少し立ち止まって考えることがあります。
本当に、
人は考えなくなったのでしょうか。
それとも、
考えなくても進む職場になっているのでしょうか。
組織の中では、
いつの間にかこんな流れが生まれます。
まず、
仕事を早く進めるために管理職が方向を示します。
次に、
ミスを防ぐために具体的な指示を出します。
すると、
仕事は確かに進みます。
けれど同時に、ある変化が静かに起き始めます。
考える必要がなくなる。
指示が増えるほど、
現場は効率的に動くように見えます。
迷いが減り、
判断の時間も短くなる。
管理する側にとっては、
とても安心できる状態です。
けれど、
その状態が続くと
現場には別の変化が生まれます。
自分で考える余白がなくなる。
ある中堅社員の方が、
こんなことを話してくれました。
「自分で判断していいのか、分からなくなるんです」
「もし違ったらと思うと、確認したほうが安全なので」
この言葉は、とても象徴的だと感じました。
人は、考えないのではありません。
考えなくても済む環境に慣れていく。
だからこそ、
関わり方を少し変えるだけで現場の空気が変わることがあります。
すぐに答えを伝えるのではなく、一度問いを置いてみる。
「あなたはどう見ていますか」
「この状況、どう考えますか」
すると、
最初は戸惑いながらも、
少しずつ言葉が出てくることがあります。
考える場面が生まれると、人は自然と関わり始めます。
自走する人材を育てる方法は、特別な技術ではありません。
むしろ、
指示を少し減らす勇気なのかもしれません。
すぐに答えを出さない。
少しだけ任せてみる。
考える時間を置いてみる。
それだけで、
現場の景色は少しずつ変わっていきます。
人が考えないのではなく、
考える場面が減っている。
もしそうだとしたら、
必要なのは
「考えさせる技術」ではありません。
考える余白をつくる関わり方です。
人を動かすのではなく、
人が動き始める環境をつくる。
その視点に立ち返るとき、
現場は静かに変わり始めます。
次回は
「空気が重い会議」で実は起きていること
― 意見が出ない組織の構造
について、
少し考えてみたいと思います