― 正しさが人を縛る構造
【シリーズ:立ち返る視点⑩最終回 武田信玄に学ぶ、人と組織の関わり方】

一見、何の問題もないように見える職場があります。
誰も手を抜いていない。
それぞれが責任を持って仕事をしている。
時間も守られている。
ルールもきちんと守られている。
整っている。
むしろ、理想的にも見える。
けれど、
少し関わりを深めていくと、
ある違和感に気づくことがあります。
どこか、息苦しさがある。
大きな問題があるわけではないのに、
どこか疲れているように見える。
そんな空気です。
こうした場面に、
思い当たることはないでしょうか。
真面目に取り組んでいるからこそ、
間違えないようにする。
迷惑をかけないようにする。
ルールから外れないようにする。
その意識が、
職場を支えているのも事実です。
けれど同時に、
その「正しさ」が、
少しずつ人の動きを縛ることがあります。
例えば、
決められたやり方を守ることに意識が向くと、
新しい試みが出にくくなる。
ミスを避けることが優先されると、
挑戦する余白が減っていく。
また、
周りに迷惑をかけないようにと考えるほど、
助けを求めることが遅れていく。
誰も悪くない。
むしろ、
一人ひとりが真剣に向き合っている。
だからこそ、
その積み重ねが、
静かな疲れを生んでいきます。
ここで立ち返りたいのは、
「正しさ」の扱い方です。
正しいことは、
組織にとって大切な土台です。
けれど、
正しさだけで組織を動かそうとすると、
人の動きは小さくなっていきます。
正しさは守るもの。
けれど同時に、
問い直すものでもあります。
ある現場で、
こんな変化がありました。
「こうあるべき」を一度横に置き、
「どうすれば進みやすいか」を話し始める。
それだけで、
少しずつ言葉が出てくるようになる。
空気が変わり、
動きが生まれていく。
その様子が、
とても印象に残っています。
働きやすさとは、
ルールが整っていることだけではありません。
安心して話せること。
少し試してみようと思えること。
迷ったときに立ち止まれること。
そうした余白があるとき、
人は自然と力を発揮していきます。
真面目な職場だからこそ、
見えにくい疲れがあります。
正しさを大切にしているからこそ、
その枠の中で動きが小さくなることがあります。
だからこそ、
少しだけ視点を変えてみる。
正しさを守るだけでなく、
人が動きやすくなる余白をつくる。
人を変えようとする前に、
見方を少し変えてみる。
それだけで、
職場の空気は変わり始めます。
この連載では、
人との関わり方や、組織の中で起きていることを、
いくつかの視点から見てきました。
どれも特別なことではなく、
日々の現場の中にあるものです。
立ち返る視点を持つことで、
見えてくるものがあります。
そしてその見え方が、
関わり方を少しずつ変えていきます。
これからも、
現場の中で見えてきたことをもとに、
人と組織の関わり方について、
お伝えしていければと思います。
次回は
立ち返る視点〈意思編〉として
人はなぜ、動けなくなるのかについて少しお伝えしていきます。