― 他人の物差しと、自分の物差し

写真:上天草・天草五橋から眺めた風景
天草五橋を渡っている時のことです。
青く広がる海を眺めていると、天草の島々を縫うように、ボートが走っていました。
そのあとには、一筋のシュプールが静かに伸びていきます。
その景色を眺めながら、
「海の上には、“正解ルート”なんてないんだな。」
それぞれが自由に、自分だけの航跡を描いていける。
そんな景色が、とても心地よく感じました。
その景色を眺めながら、
誰かと同じ航跡を描く必要はないのかもしれない。
働き方も・・・・
毎日暑いですね。
今日は、天草の海から届く涼しい風を感じるような気持ちで、
少しお付き合いいただけたらと思います。
さまざまな方とお話をしていると、こんな言葉を耳にすることがあります。
「このままでいいのでしょうか。」
「周りはもっとできているように見えるんです。」
「期待に応えられているのか不安です。」
年齢や立場、仕事は違っても、不思議なくらい似た思いに出会います。
その背景にあるのは、
自分の物差しではなく、いつの間にか周りの物差しで、自分を見つめていること。
そんな場面が少なくないように感じています。
「あの人のようになりたい。」
「もっと認められたい。」
「期待に応えなければ。」
誰かと比べることは、決して悪いことではありません。
成長のきっかけになることもあります。
しかし、それが続くと、少しずつ
「自分は何を大切にしたいのか。」
という問いが見えにくくなってしまいます。
これまで多くの方のお話を聴いてきました。
その中で感じることがあります。
充実した表情で仕事について語られる方は、
決して人と比べていないわけではありません。
比べることがあっても、
最後は自分の価値観に立ち返り、自分なりの答えを見つけています。
だからこそ、周りの評価に一喜一憂するのではなく、
「昨日より少し前に進めた。」
そんな小さな成長を大切にされています。
以前、このコラムで武田信玄の
「人は城、人は石垣、人は堀」という言葉をご紹介しました。
人にはそれぞれ異なる役割があり、その違いが組織の力になるという考え方です。
この言葉を思い返すたびに感じるのは、人は誰かと同じになる必要はない。
ということです。
城には城の役割があり、
石垣には石垣の役割があり、
堀には堀の役割があります。
どれが優れているということではなく、
それぞれに果たすべき役割があります。
働き方も同じです。
誰かの正解が、自分の正解とは限りません。
「自分らしく働く」と聞くと、
好きなことを自由にやることだと思われるかもしれません。
私はそうではないと思っています。
自分らしく働くとは、
自分が何を大切にしたいのかを知り、その価値観を持って仕事に向き合うこと。
その積み重ねではないでしょうか。
他人の物差しだけで歩き続けると、
評価されても満たされないことがあります。
一方で、
自分の物差しを持てるようになると、
失敗や遠回りも、
自分自身の成長として受け止められるようになります。
私自身も、全国でさまざまな方とお会いするたびに、
「自分らしい働き方」に正解はないことを教えていただいています。
誰かと比べるより、
昨日の自分を振り返り、
今日の自分と向き合う。
その積み重ねが、
明日の自分をつくっていくのだと思います。
その物差しを持っているのに、なぜ人は迷ってしまうのでしょうか。
次回は、
「正解」を探すほど、自分の答えが見えなくなる
― 選択肢が多い時代の意思決定
をテーマに、情報があふれる時代だからこその「選ぶ難しさ」について考えていきます。