立ち返る視点〈意思編〉― 挑戦を止める空気の正体

情報があふれる時代になりました。
スマートフォンを開けば、
成功事例も、正解も、
誰かの意見もすぐに入ってくる。
けれどその一方で、何が本当なのか。
何を信じればいいのか。
ファクトとフェイクの境界が、
以前より見えにくくなっているようにも感じます。
だからこそ今、
「まずやってみよう」よりも、
「間違っていないか確認したい」
という空気が強くなっているのかもしれません。
以前より、
挑戦することに慎重な空気が増えている。
そんな感覚があります。
SNSを開けば、
誰かの成功が流れてくる。
一方で、
失敗は切り取られ、広がり、
時には強く否定される。
企業でも、
「ミスを減らす」
「リスクを避ける」
「間違えない判断をする」
そうした言葉が、以前より増えているように感じます。
もちろん、
慎重さは大切です。
安全を守ることも、信頼を守ることも必要です。
けれど時々、
“失敗しないこと”が目的になった瞬間、
人の動きが止まることがあります。
若手社員の方が、
こんなことを話してくれました。
「確認してから動こうと思っていたら、
結局、動くタイミングが分からなくなってしまって」
また、
管理職の方も、
「任せたい気持ちはあるんです。
でも、失敗させてはいけないと思うと、
つい口を出してしまうんです」と話されていました。
立場は違っても、
そこには共通した空気があります。
“失敗を避けたい”
という思いです。
けれど、
ここで少し立ち止まって考えたいことがあります。
人は、
本当に失敗そのものを恐れているのでしょうか。
もしかすると、
責められること。
評価が下がること。
期待を裏切ること。
そうした“失敗の後”を、恐れているのかもしれません。
すると人は、
挑戦する前に、
「これで合っていますか」
「前例はありますか」
「間違っていませんか」
を探し始めます。
その状態が続くと、挑戦しないほうが安全。
動かないほうが安心。
そんな空気が、少しずつ組織の中に広がっていきます。
けれど本来、
挑戦とは、最初から正解が見えているものではありません。
武田信玄も、
数々の戦の中で、状況を見ながら、試しながら、
修正しながら進んでいたと言われています。
つまり、
“失敗しない人”だったのではなく、
“立て直しながら進める人”だった。
私はそこに、
今の組織づくりにも通じる視点を感じます。
挑戦できる組織とは、
失敗がない組織ではありません。
失敗しても、
そこから対話できる組織。
失敗を、
人の価値そのものと結びつけない組織。
そうした空気があるとき、
人は少しずつ、
「やってみようかな」と思えるようになります。
人を止めるのは、
能力不足だけではありません。
“失敗できない空気”
が、
挑戦を止めていることがあります。
だからこそ、
「なぜ動かないのか」を見る前に、
「挑戦しにくい空気になっていないか」
そこに目を向けることが、
これからの組織には必要なのかもしれません。