― 意見が出ない理由 ―
【シリーズ:立ち返る視点⑤ 武田信玄に学ぶ、人と組織の関わり方】

新しい年度が始まると、
多くの組織で会議の場面が増えてきます。

方針を共有する会議。
進捗を確認する会議。
課題を話し合う会議。

会議は、
組織の方向を整える大切な時間です。

けれど現場では、
こんな声を耳にすることがあります。

「会議になると、みんな急に静かになるんです」

「意見を聞いても、なかなか出てこない」

「結局、自分がまとめることになる」

この状況は、
決して珍しいものではありません。

むしろ、多くの職場で起きています。

けれど、ここで少し立ち止まって考えてみたいのです。

人は、本当に意見を持っていないのでしょうか。

現場で働く人たちは、
日々さまざまなことを感じ、考えながら仕事をしています。

問題点も、改善のヒントも、
現場の人が一番よく見ています。

それでも、
会議になると言葉が出なくなる。

そこには、
ある共通する空気があります。

それは、
「正しい意見を言わなければいけない」
という空気です。

会議では、無意識のうちに
こう考えてしまうことがあります。

間違ったことを言ったらどうしよう。
的外れだったら恥ずかしい。
上司と違う意見だったらどうなるだろう。

すると、
人は自然と言葉を選び始めます。

そして、
安全な選択を取ります。

何も言わない。

もう一つ、
会議が静かになる理由があります。

それは、
答えがすでに決まっていると感じるときです。

誰が最終的に決めるのか。
どこまで話していいのか。

その境界が見えないとき、人は様子を見始めます。

最初の発言を待つ。
流れを読む。
空気を確かめる。

こうして会議は、静かな時間になっていきます。

興味深いのは、
会議が終わったあとです。

会議室を出た途端、
会話が始まることがあります。

「さっきの話ですが…」
「実は別の案もあって」

本当の意見は、会議の外で語られる。

これは、
多くの職場で見られる光景です。

会議が静かになるのは、
人が消極的だからではありません。

多くの場合、
意見を出すための余白が会議の中にないだけなのです。

正解を求めすぎると、言葉は減ります。

評価の空気が強いほど、意見は慎重になります。

その結果、
会議は整って見えるけれど、考えは表に出てこない。

だからこそ、
会議の質を変えるために必要なのは、
特別な技術ではないのかもしれません。

少しだけ、
問いを変えてみる。

結論を急がない。
途中の考えを歓迎する。

それだけで、
会議の空気が変わることがあります。

人が話さないのではなく、話す余白がない。

もしそうだとしたら、
必要なのは
「発言させる技術」ではありません。

考えが出てくる場をつくること。

その視点に立ち返るとき、
会議は
報告の場から 思考の場へと変わっていきます。

次回は

渋柿は渋柿として使え
― 人材育成の大きな勘違い
をテーマに、適材適所という言葉の本当の意味について、
少し考えてみたいと思います。