― 教育現場から見えてくるもの

【シリーズ:立ち返る視点⑧ 武田信玄に学ぶ、人と組織の関わり方】

立ち止まって見ていると、
見えてくるものがあります。

広がる景色の中で、
自分の立ち位置や、これまでの流れが、
少しだけ整理されていくような感覚です。
けれど現場の中では、
その時間を持てないまま、
誰かを支え続けていることもあります。

現場で対話を重ねていると、
こんな場面に出会うことがあります。
誰かの話を丁寧に聞き、
周りに気を配り、
場を整えようとしている人がいる。
その姿は、
とても自然で、頼もしく見えます。

けれど、
ふとした瞬間に気づくことがあります。
その人が、
どこか一人で抱えているように見えることがある。
周りに人はいるのに、
どこか距離があるように感じる。
そんな場面です。

こうした状況は、
教育現場に限ったことではありません。
企業でも、
行政でも、
同じような構造を見ることがあります。

責任感がある人ほど、
周りを支えようとします。
場を乱さないようにする。
誰かの負担を減らそうとする。
自分が引き受けたほうが早いと判断する。
その積み重ねが、
現場を支えているのも事実です。

けれど同時に、
その関わり方が、
別の状態を生むこともあります。
少しずつ、
頼る機会が減っていく。
少しずつ、
任せることが減っていく。
気がつくと、
自分の中に仕事が集まっている。

周りからは
「しっかりしている人」
「任せられる人」と見られる。
だからこそ、
弱さを見せにくくなる。
頼るタイミングを失っていく。

その結果、
支えているはずの人が、
静かに孤立していくことがあります。

これは、
本人の問題ではありません。
むしろ、
その人の姿勢がつくり出している構造とも言えます。

頑張っている人ほど、
周りに迷惑をかけないように動く。
その配慮が、
結果として、
自分を切り離してしまう。

ここで立ち返りたいのは、
「支える」という言葉の意味です。
支えることは、
抱えることではありません。
支えることは、
関係の中にいることです。

ある現場で、
こんなやり取りがありました。
「少し任せてもいいですか」
その一言で、
周りの動きが変わり始める。
それまで一人で担っていたものが、
少しずつ分かれていく。
その変化を見ていて、
とても印象に残りました。

人は、
一人で支え続けることはできません。
だからこそ、
支える側にも、支えが必要です。

支える人を、どう支えるか。
その視点があるとき、
現場の空気は少しずつ変わっていきます。

誰かを支えるとき、
同時に、
自分も関係の中にいる。
その感覚を取り戻したとき、
孤立は、少し違う形に変わっていくのかもしれません。

次回
判断を先送りする空気が、
いつの間にか組織に広がっていく。
誰も間違っていないのに、
決めきれない。
そんな場面に出会うことがあります。


テーマ
百人のうち九十九人に誉められる組織は、危うい

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について、
意思決定の視点から、
少し立ち止まって見てみたいと思います。